概要
2次元シンボルの印刷評価は、ISO15415で規格化されている。本規格では、2次元シンボルの特徴的な属性を計測する方法を規定し、計測結果を評価し等級付けする方法と総合評価する方法を定義している。2次元シンボルの評価は、多段のスタック型シンボルとセルによるマトリックス型シンボルに分けられており、スタック型シンボルの評価は、バーコードシンボルの印刷評価規格ISO/IEC 15416を基本にしている。シンボルの検証機の性能については、ISO 15426で別に規定されている。
2次元シンボル印刷品質の等級付け
2次元シンボルの印刷評価は、シンボルの総合品質を表示する総合評価グレードを導き出し、様々な環境における読取性能を予測できるようにしている。評価は、何回かの読み取りでパラメータ毎のグレードを求め、それを平均化して最終グレードとする。それぞれのパラメータグレードやスキャングレードは、“4” を最高とする“4”から“0”までの数値で表し、それに等価であるA, B, C, D, Fの英字で表す。
スタック型シンボルの総合グレードは、ISO/IEC 15416によるスキャン反射率波形、産出コードワード、未使用誤り訂正、シンボルロウインジケータとシンボルキャラクタの印刷品質を解析し、最低のグレードを総合グレードとする。
マトリックス型シンボルの総合グレードは、イメージのスキャングレードの算術的平均値とする。もし、同じシンボルで異なったデコード結果が出た場合は、そのスキャングレードは、“0”とする。また、総合グレードの平均値は、小数点1位までに圧縮する。
品質グレードの表示
数値グレード |
英字グレード |
4 |
A |
3 |
B |
2 |
C |
1 |
D |
0 |
F |
数値グレードと英字グレードの関係
スタック型シンボルの印刷品質
スタック型シンボルの印刷品質は、バーコードシンボルの印刷品質規格ISO/IEC 15416を基本に、産出コードワード、未使用誤り訂正、印刷品質の評価を加えている。評価は、スタック型シンボルの1行毎にスキャンして行われる。
(1) 反射率波形分析による評価
スタートストップまたは行アドレスパターンは、アプリケーション規格またはISO/IEC 15416規格による開口径を使用し、ISO/IEC 15416にしたがって評価する。それぞれのスキャンにおけるグローバル閾値は、(R max + R min) / 2とする。ここで、R maxは、スキャンの中の最大反射率差であり、R minは、最小反射率差である。グローバル閾値の上は、全てスペースまたはクワイエットゾーンと見なし、下は、すべてバーと見なす。エッジ位置は、 ISO/IEC 15416にしたがってスペースとバーの反射率の中間として決められる。また、デコードとデコーダ容易度の評価については、シンボルの参照デコードアルゴリズムを適用する。
反射率波形分析のためには、シンボルの高さに対してほぼ等間隔で10回のスキャンを行う。1回のスキャンにおけるグレードは、個々のパラメータの最低グレードとし、それらを算術的に平均して反射率波形グレードとする。
(2) 産出コードワードの評価
このパラメータは、リニアスキャンによりシンボルデータを復元できる効率を示すものである。それぞれの適正なスキャンのために、実際にデコードされたコードワードとシンボルの最終的なデコードと比較し、合致するコードワード数を計算する。次に有効にデコードされたコードワードの合計数を積算し、そして、シンボルのそれぞれのコードワードがデコードされた回数と、それぞれの行を検知した回数を計算する。また、それぞれのスキャンで、行を跨いだ回数も計算し記録する。そして、デコードできたコードワードの最大数を計算し、次の条件までスキャンを繰り返す。
- デコードできたコードワードの最大数が、シンボルのコードワード数の10倍以上になった。
- デコードできる最大数と最小数の行が、それぞれ3回以上スキャンされた。
- 誤り訂正でないデータコードワード数の90%以上の数が、2回以上デコードされた。
但し、デコードされた有効なコードワード数の合計と行を跨いだ回数の合計の比が、10対1以下であれば、読取角度を調整して改めて測定する。産出コードワードは、有効にデコードされた有効なコードワード数であり、デコードできたコードワードの最大数のパーセントとして表現される。
産出コードワードの評価
産出コードワード |
グレード |
≧71% |
4 |
≧64% |
3 |
≧57% |
2 |
≧50% |
1 |
<50% |
0 |
(3) 未使用誤り訂正(Unused Error Correction)の評価
デコードできるコードワードが安定するまでスキャンし、未使用の誤り訂正を計算する。ここで、未使用誤り訂正UECは、次のように表される。
UEC=1.0-((e+2t) / E cap)
UEC :未使用誤り訂正
e :消失したコードワード(棄却エラー)
t :間違ったコードワード(代入エラー)
E cap:誤り訂正の許容量
ここで、誤り訂正が使用せずにデコードできた場合は、UEC=1となる。もし、(e+2t)がE capより大きい場合は、UEC=0となる。また、シンボルに1つ以上のエラー訂正ブロックがある場合、UECは、それぞれのブロック単位で計算し、最小値をグレードにする。
未使用誤り訂正の評価
未使用誤り訂正 |
グレード |
≧0.62 |
4 |
≧0.50 |
3 |
≧0.37 |
2 |
≧0.25 |
1 |
<0.25 |
0 |
(4) コードワード印刷品質の評価
コードワードの印刷品質は、マスキングによる誤り訂正の効果を測るために考えられた評価である。それは、ISO/IEC 15416にしたがって評価されたシンボルのデータ部分もカバーしながら、デコード容易度、欠陥、モジュレーションについて評価する。ここで、シンボルに 1つ以上のエラー訂正ブロックがある場合、それぞれのブロック単位で評価し、最小値をグレードとする。
対象のシンボルは、誤り訂正でないデータコードワードの90%の数が10回デコードするまで、または、それぞれのコードワードが少なくとも1回以上デコードされるまでスキャンする。それぞれのスキャンで、それぞれのシンボルキャラクタ毎にデコード容易度、欠陥、モジュレーションを計測する。
スタートストップあるいはロウインジケータのオーバーヘッド部分は、誤り訂正の計算に含まれていない。これらのキャラクタは、対応するキャラクタと供にそれぞれの行で最初に評価されるが、これらの評価は、行の評価を抑制する。そこで、それぞれのパラメータの最小値は、暫定値としておき、これがオーバーヘッドのグレードより高い場合は、グレードを下げる。
マトリックス型シンボルの印刷品質
マトリックス型シンボルの印刷評価は、照明と読取位置が決められた環境で、シンボルの高解像度のグレースケールイメージを取得することによって行われる。取得した行単位のイメージを参照グレースケールイメージに変換し、それからシンボルコントラスト、モジュレーション、固定パターン障害のパラメータを測定し等級付けする。次に、グローバル閾値により2値化イメージを作り出し、デコード、軸非均一性、グリッド非均一性、未使用誤り訂正のパラメータを測定し等級付けする。更に、それぞれの軸に沿って印刷の太りと細りについても測定され、等級付けしない工程管理情報として報告する。スキャングレードは、これら7種のパラメータの中で最も低いグレードとする。
(1) デコードの評価
デコードは、シンボルが読み取るための特徴をすべて持っているかどうかについて、読み取りできたかどうかで判定する。これは、データと誤り訂正キャラクタのエンコード、モジュールの位置、ファイダーパターンやアライメントパターンなどのオーバーヘッド、そして、クワイエットゾーンが規格どおりの完全なシンボルであるかどうかをテストする。デコードアルゴリズムによってデコードできない場合は、グレード“0”とし、読み取りできた場合は、グレード“4”とする。
(2) シンボルコントラストの評価
シンボルコントラストは、シンボルの中で明暗が十分明瞭であるか測定する。グレースケールイメージを用いて、測定エリアの最も高い反射率R maxと最も低い反射率R minを測定し、その差をシンボルコントラストSCとする。
SC=R max-R min
シンボルコントラストの評価
シンボルコントラスト |
グレード |
≧70% |
4 |
≧55% |
3 |
≧40% |
2 |
≧20% |
1 |
<20% |
0 |
(3) モジュレーションの評価
モジュレーションは、明るいモジュールと暗いモジュールの反射率が規格どおりかを測定する。印刷の太り/細り、グリッドから外れたモジュール配置、印刷面の光学的特性は、モジュールの反射率とグローバル閾値の間の許容差を少なくする可能性がある。もし、モジュレーションが十分でなければ、明暗の認識が不正確になり、モジュールの問題が増加する。
コードワードのそれぞれのモジュールの反射値は、グレースケールイメージの上に、参照デコードアルゴリズムから決定されたグリッドを重ね合わせることによって測定する。1つ以上の誤り訂正 ブロックから成るシンボルは、それぞれ独立して評価され、最低のグレードをモジュレーションのグレードとする。モジュレーションMODは、次に関係にある。
MOD=2*(abs(R-GT)) / SC
R :コードワードの中でグローバル閾値に最も近いモジュールの反射率
GT:グローバル閾値
SC:シンボルコントラスト
モジュレーションの評価
モジュレーション |
グレード |
≧0.50 |
4 |
≧0.40 |
3 |
≧0.30 |
2 |
≧0.20 |
1 |
<0.20 |
0 |
(4) 固定パターン障害の評価
固定パターン障害の評価は、ファインダーパターン、クワイエットゾーン、タイミング、ナビゲーション、あるいは、他のパターンに対する障害が、位置を検知し認識できる範囲に抑えられているかをテストする。特別に注意するパターンや障害の大きさは、シンボル毎に規定される。
固定パターンの障害は、モジュールエラー数(例えば、意図した色が反転して現われたモジュール)に関して、参照グレースケールイメージで評価する。ファインダーパターンやタイミングのような明瞭な特徴の数を持っているシンボルは、分離して評価し、最も低い値をグレードに使用する。固定パターンは、シンボル毎に適当な閾値を使用して等級付けする。
(5) 軸非均一性(Axial Non-uniformity)の評価
マトリックス型シンボルは、データモジュールが正多角形の中に配置されている。参照デコードアルゴリズムは、データを切り出すためにこれらのモジュールの中心位置をマッピングする。軸均一性は、マッピングされた中心の間隔を測定し等級付けする。軸非均一性は、通常以上に非標準的な視野角で読み取りが妨げられる平坦でないシンボルのためにテストする。
隣接したサンプリングポイント間の間隔は、それぞれの軸方向で独立して測定し、それぞれの軸に沿って間隔を平均化する。軸非均一性は、サンプリングポイント間隔が1つの軸とどのくらい異なっているかを測定する。
AN=abs(X avg-Y avg) / ((X avg + Yavg) / 2)
AN:軸非均一性
abs( ):絶対値
軸非均一性の評価
軸非均一性 |
グレード |
≧0.06 |
4 |
≧0.18 |
3 |
≧0.10 |
2 |
≧0.12 |
1 |
<0.12 |
0 |
(6) グリッド非均一性(Grid Non-uniformity)の評価
グリッド非均一性は、シンボルの2値化イメージと理論位置から、参照デコードアルゴリズムによって導かれるグリッド交点の最大ベクトル偏差を測定し等級付けされる。シンボルのデータエリアにすべてのグリッド交点をプロットし、理想的なグリッド位置と比較する。実際と理論の交点の最大距離が、X寸法の分数として明示される。
グリッド非均一性の評価
グリッド非均一性 |
グレード |
≧0.38 |
4 |
≧0.50 |
3 |
≧0.63 |
2 |
≧0.75 |
1 |
<0.75 |
0 |
(7) 未使用誤り訂正(Unused Error Correction)の評価
未使用誤り訂正は、シンボルの部分またはスポットの障害が、誤り訂正による読み取りの安全マージンをどのくらい侵食したかを測定し等級付けする。参照デコードアルゴリズムを使用して2値化イメージをデコードする。ここで、未使用誤り訂正UECは、次のように表される。
UEC=1.0-((e+2t) / E cap)
UEC:未使用誤り訂正
e :未読したコードワード(棄却エラー)
t :誤読したコードワード(代入エラー)
E cap:誤り訂正の許容量
ここで、誤り訂正が使用せずにデコードできた場合は、UEC=1となる。もし、(e+2t)がE capより大きい場合は、UEC=0となる。また、シンボルに1つ以上のエラー訂正ブロックがある場合、UECは、それぞれのブロック単位で計算し、最小値をグレードにする。
未使用誤り訂正の評価
未使用誤り訂正 |
グレード |
≧0.62 |
4 |
≧0.50 |
3 |
≧0.37 |
2 |
≧0.25 |
1 |
<0.25 |
0 |
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