ゼブラ端末でピッキング監査を効率化し、 調剤過誤を最小化
最先端の端末が調剤薬局チェーンの可能性を切り拓く
I&Hは、調剤薬局事業を中心に医薬品の流通や介護・福祉など、多彩な事業を全国規模で展開する大手調剤薬局チェーン。総合ヘルスケア事業を幅広く展開することを目指し、2019年2月に阪神調剤ホールディングからI&Hへと社名変更を果たしました。同社では、グル ープ全体の在庫管理システムの更新を機に、調剤薬局店舗での医薬品の発注と、「薬タッチ」と呼ばれるピッキング監査に使用する端末をゼブラ・テクノロジーズのモバイルコンピュータ「TC21」へ変更するなど、医薬品の安心・安全な提供と調剤業務の効率化に向けた取り組みを進めています。
市場背景
厳しい環境下で新たな取り組みを模索する調剤薬局業界
昨今の調剤薬局業界は、薬価や調剤報酬の引き下げなどの影響により、厳しい経営環境に置かれています。こうした状況を経営規模の拡大で乗り切ろうと、M&Aの動きも活発化してきています。もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も少なくありません。
「新型コロナの影響で、医療機関への患者の受診抑制が強まり、処方箋枚数が全体で3割程度減少したときもありました。また、多くの医療機関でオンラインの保険診療が始まり、調剤薬局でもオンライン服薬指導が開始されるなど、患者と直接接触しない薬の渡し方が模索されるようになってきています」と説明するのはI&Hの薬局支援部で部長を務める大野英樹氏だ。I&Hでも、患者を店内に待たせることなく患者の自宅に配達する新たな配送サービスを2021年1月から開始していると大野氏は言います。
課題・選定理由
専用ハンディーターミナルの老朽化で端末の刷新を検討
画面の見やすさと使い勝手の良さがゼブラ端末選定の決め手に
この厳しい環境下を乗り越えるべく、調剤薬局チェーン各社は、業務効率化やIT統合などに力を注いでいます。I&Hにおいても、グループ統一の在庫管理システムの更新を進めるなかで、医薬品の発注業務とピッキング監査の効率化を検討していました。
「当社ではこれまで、医薬品の発注とピッキング監査に、専用のハンディーターミナルを使用していましたが、システムの老朽化により端末のリプレースが必要でした。また、業務専用端末ということもあり、汎用性も低く、他業務へ応用が困難でした」(大野氏)
I&H株式会社薬局支援部 部長
大野英樹氏
I&Hでは、ハンディーターミナルのリプレースを機に、かねてから同社の在庫管理システム設計・開発を担当している日本流通システム(JCS)に、端末変更の相談を持ち掛けました。そこで、JCSから紹介されたのは、ゼブラのモバイルコンピュータ「TC21」(以下、ゼブラ端末)でした。I&Hでは他社の端末も比較検討していましたが最終的にゼブラ端末を採用することに決めました。採用した理由について、大野氏は次の点を挙げています。
- 液晶画面が大きく文字が見やすい
- バーコードの読み取り性能が高い
- スキャナ一体型で、使いやすいスマホタイプ重量が軽く扱いやすい
- 拡張性が高く将来的に多様な用途に活用できる
アプリの配信や更新など運用・保守が容易
また、規制緩和が行われ、薬剤師以外の事務員も処方薬を棚から取り出すことが可能になったため、調剤過誤を最小限に抑えるシステムを必要としていました。
調剤過誤を防止するうえで重要な役割を担うのが、ピッキング監査です。これは処方箋に記載された薬と実際に処方された薬が同一であるか確認する業務で、正確に行うには端末画面の内容が見やすく、JANコードやGSIコードなどの医薬品用のコードを正しく迅速に読み取れることが不可欠です。ゼブラ端末はこの読み取り性能が評価されました。
現場では端末の軽さも評価されており、大野氏は、「薬剤師のスタッフは端末を長時間持ったまま作業する場面が多いためスマホタイプかつ重量が軽く、扱いやすいことも重要な要件でした。実際に現場からは、『以前に比べて扱いやすくなった』『見やすくなった』という声が寄せられています」と述べています。
導入効果
専用端末とコンシューマー端末のメリットを併せもつ
拡張性や運用性の高さも重要なポイントに
日本流通システム株式会社
ITソリューション部
システムプロバイダ課 課長
渡辺 大祐氏
選定の決め手になったもう一つの理由は、ゼブラ端末がAndroidベースのスマホタイプの端末であり、拡張性が高くさまざまなアプリや機能を必要に応じて追加して活用できることでした。
例えば、現在は患者と連絡専用のスマホを使ってLINEでやり取りを行っていますが、「今後は、店舗スタッフが自分のゼブラ端末を使ってSNSツールやSMSで連絡できるようにしたいと考えています」と大野氏は語っています。
ゼブラ端末の保守・運用に関しては、端末管理機能を提供するMDM(Mobile Device Management)ツール「MobiControl」を導入することで、必要なアプリの自動配信やバージョンアップの自動化、不必要なアプリの排除など、保守・運用の効率化を実現しています。
JCSのITソリューション部システムプロバイダ課 課長の渡辺 大祐氏は「ゼブラ端末とMobiControlとの相性もよく、実店舗へのゼブラ端末の配備も瞬時に終えることができます」とその有効性を強調しています。
I&Hの阪神調剤薬局の店舗にゼブラ端末が最初に導入されたのは2020年8月のこと。現在、全国の店舗への導入が順次進められており、2022年1月までに阪神調剤薬局の約200店舗への導入を終える計画です。その後グループ会社への導入も進められ最終的に導入される店舗数はおよそ600にのぼるとのことです。
今後の展望
将来的な機能拡張や「調剤薬局の無人化」の実現にゼブラ端末を応用
ゼブラ端末の導入が一段落すれば、医薬品のピッキング作業や監査、発注のさらなる迅速化・効率化が次なる課題になります。それを解決するための方策として大野氏が検討しているのが、作業者の指先や手の甲に装着して簡単にスキャンできる超小型・軽量のゼブラ社製リングスキャナ「RS5100」の採用です。
これにより、作業効率の飛躍的な向上が期待できます。また、スマホ型になったおかげで医薬品の画像情報を画面に表示させ、更に視認性を向上して安全性を高める計画も進んでいると話しています。
これまで見てきたように、Android ベースのゼブラ端末は、さまざまな用途に活用できる可能性を有しています。大野氏は、「拡張性の高いゼブラ端末を単にピッキングの作業や監査に使うだけでもったいないと感じています。
今後は患者ケアの向上や位置情報の利用など、いろいろなことに活用できるように模索を続けていきます」と強調しています。
I&Hでは現在、「調剤薬局の無人化」に向けた取り組みを始めています。大野氏は「例えば調剤で使用する分包機などの機器とゼブラ端末を連携させることによって、端末で機器をコントロールできるようにすることも考えられます。今後ますますゼブラ端末活用の可能性は広がると思います。」
「今回のプロジェクトは、ゼブラ社からの端末支援と、JCSの医薬品発注とピッキング監査システムの設計構築、インフラ提供、運用保守までを一貫して提供頂けました。ハード面もソフト面も両方任せることができ、とても頼もしかったです。」と話します。
仕様表(業務用携帯端末TC21)
物理特性 | |
寸法 | 標準バッテリ装着時 :158mm(長さ)x 79mm(幅)x 13.7mm(奥行き) 大容量バッテリ装着時:158mm(長さ)x 79mm(幅)x 17.3mm(奥行き) |
重量 | 236g(標準バッテリ搭載時) |
ディスプレイ | 5.0インチカラーHD(1280 x 720)、LEDバックライト、Corning® Gorilla® Glass |
イメージャウィンドウ | Corning® Gorilla® Glass |
タッチパネル | 容量性タッチパネル、マルチタッチ式 |
電源 | 取り外し・修理可能な充電式リチウムイオンバッテリ 標準容量:3100mAh 大容量:5400mAh 4時間時間足らずで充電完了(10時間 = 1シフト) |
拡張スロット | 128GBマイクロSDスロット x 1 |
ネットワーク接続 | USB 2.0 OTG x 1(ホスト/クライアント)、タイプCコネクタ |
通知方式 | 可聴音、マルチカラーLED、バイブレーション |
キーパッド | オンスクリーンキーパッド |
音響 | スピーカー:1W(94dBA)音声サポート(内蔵スピーカー/マイク)マイク x 2 |
ボタン | 両側にスキャンボタン、音量調節ボタン、電源ボタン、PTT(プッシュツートーク)キー |
性能特性 | |
CPU | Qualcomm Snapdragon™ 660オクタコア、1.8GHz |
オペレーティングシステム | ビルトインサポートを備えたAndroid 10 今後のAndroidのリリースに備えて |
メモリ | 4GB RAM/64GB フラッシュメモリ、3GB RAM/32GBフラッシュメモリ、2GB RAM/16GB フラッシュメモリ (全ての市場で利用可能ではありません) |
セキュリティ | 確認済みブート、安全ブート |
動作環境 | |
動作温度 | -10℃~50℃ |
保管温度 | -30℃~70℃ |
湿度 | 5%~95%(結露なきこと) |
耐落下衝撃性能 | MIL-STD 810Gに従って、動作温度範囲下で1.2mの高さから平坦なコンクリート 面へ落下後、動作可能 |
耐転倒衝撃仕様 | 0.5mからの300回の転倒後に動作可能 |
シーリング | IP67 |
振動 | 4Gピーク、5Hz~2kHz、軸あたり1時間 |
熱衝撃 | -40℃~70℃の急激な変化 10サイクル(1サイクル = -40℃で1.25時間、70℃で1.25時間) |
ESD(静電気放電) | ±15kVdc大気放電、±8kVdc直接放電、±8kVdc間接放電 |
IST(インタラクティブセンサー技術) | |
光センサー | ディスプレイのバックライトの輝度を自動的に調整 |
動作センサー | MEMSジャイロスコープ付き3軸加速度計 |
近接センサー | ユーザーが通話中にハンドセットを頭部に当てると自動的に検知され、ディスプレイ出力およびタッチ入力が無効になります。 |
データキャプチャ | |
スキャン | SE4100 1D/2Dイメージャ SE4710 1D/2Dイメージャ |
カメラ | 13MP背面カメラ、5MP前面カメラ(オプション) |
NFC | 内蔵型:高RF出力パワー、MIFARE、ISO 14443 A&B、FeliCa、ISO 15693およびNFC フォーラム仕様カード、最大50mmの読み取り範囲 |
無線WANデータ/音声通信 | |
音声通信 | オプションのPush-to-Talk (PTT) Express* Mobility DNAソフトウェアアプリケーションを利用すると、屋内でのトランシーバー式インスタントPTT通話が可能です。 オプションのWorkforce Connect Push-to-Talk (PTT) Pro* Mobility DNAは、サブスクリプションサービスを介して屋内外でトランシーバー式インスタントPTT通話を実現する、導入が容易でコスト効率の高いサブスクリプションベースのソフトウェアアプリケーションです。 さらにオプションのWorkforce Connect Voice*があれば、TC21/TC26デバイスをフル機能のPBXハンドセットとして活用可能。どんなに複雑な電話通信機能でも簡単に実行でき、追加で音声対応デバイスを購入・管理する必要はありません。 |
GPS | A-GPS付きGPS:Glonass、BeiDou、Galileo |
無線LAN | |
WLAN無線 | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac/d/h/i/r/k、Wi-Fi™認定、IPv4、IPv6、1×1 MU-MIMO |
転送速度 | 2.4GHz:802.11b/g/n – 20MHz、40MHz – 最大150Mbps 5GHz:802.11a/g/n/ac – 20MHz、40MHz – 最大433Mbps |
動作チャネル | チャネル1~13(2412~2472MHz):1, 2, 3, 4,5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13 チャネル36~165(5180~5825MHz):36, 40,44, 48, 52, 56, 60, 64, 100, 104, 108, 112, 116, 120, 124, 128, 132, 136, 140, 144, 149, 153,157, 161, 165 チャネルバンド幅:20、40、80MHz 実際の動作チャンネル/周波数やバンド幅は、各地域の規制および承認機関により異なります |
セキュリティおよび暗号化 | WEP(40または104ビット)、WPA/WPA2パ ーソナル(TKIPとAES)、WPA/WPA2エンタ ープライズ(TKIPとAES)-EAP-TTLS(PAP 、MSCHAP、MSCHAPv2)、EAP-TLS、PEAPv0- MSCHAPv2、PEAPv1-EAP-GTC、LEAP. EAP-PWD |
認証 | 802.11a/b/g/n、WPA、WPA2 |
高速ローミング | 802.11r |
ワイヤレスPAN | |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 BLE |
環境コンプライアンス | • RoHS 2指令2011/65/EU、改訂版2015/863 • REACH SVHC 1907/2006 製品および原材料のコンプライアンスリストは、次のサイトをご覧く ださい: www.zebra.com/environment |
Mobility DNA™ Professional統合ソリューション | DataWedge デバイス診断 EMDK Enterprise Home Screen Mx(モビリティ拡張機能) StageNow |